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新司法試験・合格体験記を読む

大学の公式ホームページに掲載されているものなので、割り引いて読む必要がありますが、非常に参考になると思います。
(そもそも、公刊されている合格体験記は、割り引いて読むべきものでしょうが)

東北大学法科大学院メールマガジン
第25号 11/30/2007
http://www.law.tohoku.ac.jp/lawschool/lawmm/vol25.html

※以下では、書かれていることが「おおよそ事実」であることを前提として、自分が印象に思ったの点を引用し、コメントを加えます。

「とにかく学校の勉強を一生懸命やろうと思いました」

「実務系の科目,たとえば,刑事裁判演習や刑事実務演習は新司法試験の勉強としても役にたつと思います」

「その際にもあまり覚えようとはせず,自分の考え,思考過程を基本書の考え方や判例の考え方にあわせていくようにしました。結論が判例や通説と違った場合でも,自分の納得のいく結論,自分の立場からすれば論理的な結論であればその結論をとるようにしました」

第三に,新司法試験を受験して感じたことをお話したいと思います。択一の試験問題は,現行の司法試験と問われていることが違うと思います。基本的な,判例や条文の知識に加え,その場で考えさせるような問題,現行の司法試験の論文で聞かれていたような問題が含まれていたように思います。そのような問題は得意だったので,択一では結構点数をとることができました。
 他方,論文の問題は,現行の司法試験とは異なり,未知の問題をその場で考えさせるような問題ではなく,基本的な知識を前提としてしっかりと事実をひろってあてはめることが,要求されていたと思います。

 わたしは,学説の対立や,法律の解釈の争いといった理論的な問題に興味があり,そちらを重点的に勉強していました。そして,あてはめの練習をあまりやっていませんでした。そのため,本試験では,かなり戸惑いました。
 ただ,やはり,具体的な事案において法をどのように適用するかという問題,すなわち,あてはめの問題を抜きにして,妥当な法解釈ができるはずもありません。あてはめについて,もっと勉強する必要があると痛感しました。
 そのためには,判例を読む際に,ある法律要件につき,どのような事実を,どのように評価し,どのようにあてはめているかということに注意して読む必要があると思います。また,実務系の科目,刑事実務演習や模擬裁判等を履修し,勉強することもできると思います。
 結局はバランスの問題ということになりますが,基礎的な知識を正確に身につけたうえで,あてはめの練習もしっかりとやることが一番合格に近い方法ではないかと思います。
 さらに,長文の問題に慣れておく必要があると思いました。私は,勉強している時には,あまり長文の問題を解いていなかったので,本番では,時間配分をうまくすることができず,時間がたりなくなってしまいました。新司法試験の問題と同程度の分量の問題はなかなかないですが,すくなくとも,プレテスト,第一回,第二回の新司法試験の問題は時間をはかって解くということを必ずやった方がいいと思います。
 また,法科大学院の勉強と新司法試験が対応しているかについてですが,私は十分対応していると思います。さきほど述べたように,新司法試験は基本的な知識を前提に,しっかりと事実をひろって,あてはめをすることが求められています。法科大学院の授業の予習・復習をしっかりとすれば,基本的な知識を身につけることができると思います。もちろん,授業で取り扱うことのできる範囲は限られていますので,足りないところは自分で補う必要がありますが,法科大学院の授業をしっかりとやっていれば,十分合格に必要な力は身につくと思います。
 あてはめの練習については,法科大学院の必修の授業だけでは必ずしも十分ではないように思います。ただ,刑事実務演習や模擬裁判等の実務科目を選択して履修したり,自分たちで答案練習したりすることによって,対応することができると思います」
※強調はESP。

コメント。
この方の合格体験記は、全体的に、バランスがとれ、メリハリがついているという点が印象的です。すなわち、法科大学院生としてあるべき過ごし方(授業の予習・復習に力を入れる)をしつつ、試験合格率の現状を踏まえて、それなりの試験対策をしており、偏りがないという点です。

法科大学院制度の理念と現実の両方からすれば、法科大学院の授業で分析力、考え方などを学び(A)、それを踏まえて、実践をする場(B)を各自で設け実践する(問題演習)、ということになりそうです。実践の場は、独学でも、グループを組んでゼミをやるでも、または予備校でも、各自にあった場でよいと思います。

※ただし、以上は法科大学院の授業が、それなりに意味があった、という前提が成立する場合に限りますので、全ての法科大学院にはあてはまらないとは思いますが。

by espans | 2008-01-12 13:42  

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