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最近の司法修習

ちょっと前の記事ですが、

田村幸一(司法研修所教官)「司法修習における民裁教育の現状」ロースクール研究6号13頁以下

があります。
最近の民裁教育の内容を知ることの出来る貴重な論説です。

引用したい部分は多数ありますが、全部引用するわけにはいかないので、一部のみ引用します。

14頁以下より。
「最近の司法研修所の要件事実教育に関しては、民裁教官室の配付する『紛争類型別の要件事実』や『事実摘示記載例集』などの教材の暗記科目になっていて魅力が薄れているとの指摘がされ、現に修習生がその意味をよく理解しないままに配付教材の丸暗記に走る傾向がみられた。従前の主張整理起案においては、いわゆる上下段方式により、上段に要件事実を文章形式で記載させそのように記載した理由を下段で説明させる形式をとっており、上段では『事実摘示記載例集』に記載されている表現を求め、下段では『紛争類型別の要件事実』に記載されている説明を求める面があったことに、修習生をして配付教材の暗記に走らせる一因があったものと思われる。そこで、最近の主張整理起案では、上下段方式をやめ、従前の上段の記載にあたる要件事実の記載に関しては、文章形式の事実摘示を求めず、いわゆるブロックダイアグラム(司法研修所『改訂問題研究要件事実』19頁参照)のように要件事実を簡潔に列挙すればよいこととして、『事実摘示記載例集』の表現をただ暗記するだけでは意味がないようにした。また、従前の下段に記載させていた内容を、『攻撃防御の構造の説明』と『要件事実に関する説明』とに分けて独立の設問とし、配付教材の暗記に結びつけやすい『要件事実に関する説明』はすべての主張ではなく特定の主張についてのみ求め、実体法および要件事実に関する理解や思考過程を自分の文章で表現することになる『攻撃防御の構造の説明』はすべての主張について記載させることとした。
 さらに、『紛争類型別の要件事実』などの配付教材に記載がない類型の事案を多く取り上げるなどして、配付教材の単なる暗記だけでは容易に記載できず、その場での思考を問う内容の課題を与えるようにしている。これによって修習生の勉強の指針が不明確とならないよう、修習生には、『配付教材をよく読んで要件事実の考え方をしっかり理解するとともに、民法等の実体法を勉強して、条文を手がかりに自分で要件事実を考えられるようにすること』を指針として指導している
※強調、アンダーラインはESP。

「要件事実は暗記ではない」と言われながらも、多くの法科大学院生や修習生、ひいては一部の実務家も「それでも要件事実は暗記である」との印象をもっていると思われます。しかし、そのようなイメージを払拭しようと司法研修所も工夫していることが、上記論説から伺えます。
(もちろん、暗記を全否定するものでもないと思います)

その意味で、法科大学院時代から「考える要件事実」を実践すると、あとあと困ることがないと思います。

by espans | 2007-12-27 05:16  

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