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「おおすぎ先生のblog寺子屋」

※タイトルは勝手に私が命名したものです。

ブルドック事件・最高裁決定を読む(おおすぎBlog)
http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50469324.html

専門的な解説のみならず、答案を書く上での視点を示して下さっており、学生にも有益です。

注目される点を引用。
 この最高裁決定は、不公正発行か否かを判断する基準を明確に述べてはいない。しかし、注目されるのが、(2)の最後の段落である。

 「また,株主に割り当てられる新株予約権の内容に差別のある新株予約権無償割当てが,会社の企業価値ひいては株主の共同の利益を維持するためではなく,専ら経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持するためのものである場合には,その新株予約権無償割当ては原則として著しく不公正な方法によるものと解すべきであるが,本件新株予約権無償割当てが,そのような場合に該当しないことも,これまで説示したところにより明らかである。」

なぜ明らかなのかを明言していないが、ここでは上の段落が示した一般論に注目する。不公正発行に関して、これまで地裁・高裁はいわゆる主要目的ルールを使って結論を導いてきたが、差止めの仮処分が最高裁まで争われたことが始めてであったため、実はこれまでに主要目的ルールらしきものに言及した最高裁判例はほぼ皆無であった。この最高裁決定が、はじめて主要目的ルールに近い判示をした。

・企業価値、株主共同の利益を維持するため → 不公正ではない
・経営者・友好的株主の支配権維持するため → 不公正

典型的な主要目的ルールの言い回しとは異なることが少し気になる。つまり、「主要」とも「目的」とも言っていない。複数の目的が並存し、そのどちらが主要目的かという<比較>ではないのだろう。「企業価値を維持するため」ならOK、「支配権維持のため」なら不公正。また、従来は「資金調達目的」「資金需要」と述べてきたところを「企業価値・・」と述べている点も新しい。
 また、最後の「本件割当てが、そのような場合に該当しないことも、これまで説示したところにより明らか」という文章は、要するに、「必要性・相当性判断」と「主要目的ルール」が実質的には同じものであることを暗示しているようにも見える。
 本件を離れて、一般的注意として、答案を書くときには、資金需要だけを強調しないこと、新株(予約権)発行の合理性(企業価値と、既存株主の利益の両面で)を意識した答案にすることが重要である」

あと、
「『取締役ではなく株主が判断すべきである』というシンプルな議論が勢いを得て、現在日本の上場会社は株式の持合を強化している。このような結果は、あるべきM&Aの姿に照らすと本末転倒であるように思われる」
は全く同感です。

なお、これは本件とは関係ないのですが、色々と注目される「独立委員会」は本当に機能するのでしょうか?構成メンバーは、それが弁護士であろうと学者であろうと、現経営陣が人を探し、現経営陣下の会社から報酬等の支払いを受けているわけですので、本当に「独立した」判断ができるかは疑問です。
単に、ビジネス弁護士と商法学者の体の良いバイト先になっているような・・・(以下、略)。

追記
ブルドックソース事件については、判例タイムズに匿名コメント(おそらく、担当調査官の手によるもの)付きで紹介されています(現時点では未読)。
http://www.hanta.co.jp/hanta-new.htm

[商  法]
4(最高裁第二小法廷平19.8.7決定)
1 株主平等の原則の趣旨は株主に対して新株予約権の無償割当てをする場合に及ぶか
2 株主に対する差別的取扱いが株主平等の原則の趣旨に反しない場合
3 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるか否かについての審理判断の方法
4 株式会社が特定の株主による株式の公開買付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権の無償割当てが,株主平等の原則の趣旨に反せず,会社法247条1号所定の「法令又は定款に違反する場合」に該当しないとされた事例
5 株式会社が特定の株主による株式の公開買付けに対抗して当該株主の持株比率を低下させるためにする新株予約権の無償割当てが,会社法247条2号所定の「著しく不公正な方法により行われる場合」に該当しないとされた事例

by espans | 2007-12-18 02:04  

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