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私法学会の感想byおおすぎ先生

また雑感(学会篇) (おおすぎblogより)
http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50372592.html

長いですが、以下引用します。考えさせられますね。

「2日目は、ワークショップと個別報告1つしか出られませんでした。ワークショップは、経済学の柳川先生のコメントを楽しみに出席して、それは報われたわけですが、経営学畑の方も数人参加されていて、経営学の分析枠組みから見た感想を述べられていて、刺激を受けました。ま、経営学的なケーススタディ(事後的なモデル分類)と経済学的な枠組み(事前の約束、インセンティブが重要)の間には距離があり、法律学者としてこれらのうちどの部分を取り入れていくのかは、なかなか大変ではあります。

こういう学際的な会合って、私法学会ではこれまで少なかったと思います。参加者が少なかったというか、東大系の若手以外には極めて限られていたことが残念ですが、少しずつ良い方向での変化が進むことでしょう。

個別報告は、いちおう会場で配布されていたレジュメは手に入るだけ入手してざっと目を通したのですが、「外国法を調べて、日本法への示唆を得ました」というパターンがほとんどですね。このやり方が悪いわけではないですが、強引なものもありますね。

私が危惧するのは、「デビュー論文はとにかく外国法を調べて、日本法と比べて、日本法への示唆を導く」という指導教授の方針が、「法律学はいかにあるべきか」という自然な問題関心の芽を摘んでいるのではないか、という点です。日本法への示唆、という下心が強すぎると、外国法へのアプローチが歪みます。日本法が外国法よりも常に劣っているという前提は現在では必ずしも成立していないので、功を焦らずに普通に比較法をすることが両国* の法律家にとって幸せではないかと思います。

* 「りょうごく」ではなく「りょうこく」。

法律は問題解決の道具であり、法理論はそのための必要要素の一つに過ぎませんから、わが国が抱えている問題を把握するためには若いうちにある程度の数の判例評釈をこなすとか、実務家と接触する機会を持つことが有用で、そういう機会がないままに外国法ばかりを勉強することには害があるかもしれません。

私が助手時代にちょっと感激したのが、師匠であるE先生が商事法務に発表した、自己株式取得規制に関するあまり長くない論文で、アメリカやドイツのルールをうまく切り取って、日本の立法論への理由付けとされていました。こういうタイプの論文は、なかなか少ないと思います。

私が初めて私法学会の末席に連なってから15年以上が経っていますが、商法学の方法論については、個別報告には大きな変化は生じていません。ただ、「まず外国法」ではない、機能的分析を中核に据えるものがごく最近になっていくつか出現しており、今後が楽しみです。

また、私が参加するより前の時代には、証取法(金商法)の研究は市民権を得ていない頃もあったようですが、今はシンポも個別報告も金商法を混ぜたもののほうが受けているような気がします。また、じわじわとですが、実務家の参加も増えてきているような気がします(気のせいかもしれませんが)」

by espans | 2007-10-12 20:14  

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