人気ブログランキング | 話題のタグを見る

注目!

ついに出ました。(面識はありませんが)大澤裕教授と植村立郎判事に感謝。

大澤裕=植村立郎「対話で学ぶ刑訴法判例 第10回 共同正犯の訴因と訴因変更の要否」法学教室324号(2007年)80頁以下

平成13年4月11日最高裁決定(刑集55巻3号127頁)の解説です。

「具体的防御説」と「抽象的防御説」を対立関係ととらえ、抽象的防御説を採用するという考え方は、平成13年決定によって、もはや放棄されたと解するのが適切でしょう(私見)。

以下、引用。
大澤 本決定(ESP補足:平成13年4月11日最高裁決定)は、これまで見てまいりましたように、訴因変更の要否に関し、新しい判断基準を示したわけですが、この基準は、訴因の機能や役割と整合していて、理論的には筋が通ったものではないかと思っております。そうしますと、訴因変更の要否に関して、本件事案の解決を超えて、より一般的な意義を持つといってよいのではないかとも思うのですが、果たしてそのように受け止めてもよいでしょうか。
 そのようなことを改めてお尋ねするのはなぜかと申しますと、確かに訴因の特定にとって不可欠な事項について審判対象確定の見地から訴因変更が必要だというのは、そのように抽象的に言う限りは、非常に明確なのですが、訴因の特定にとって不可欠な事項とは何なのかを具体的に考えてみますと、実は判断に苦しむ場面も少なくないのではないかと思うからです。従来の基準、つまり被告人の防御にとって実質的な不利益があるかどうかという基準の方が、やや曖昧さを残している分、柔軟な扱いができて、ひょっとしたら実務的に使いやすいのではないか。そういう感じを持たなくもないですが、実務の感覚として、その辺りはいかがでしょうか。
植村 ただ、具体的な場面のことを前提に訴因変更の要否を議論していくと、どうしても判断基準がぶれてくる。もともと訴因変更の良い日というのは、なかなかわかりにくい概念だと思っていますが、それがさらにわかりにくくなってしまわないか。そういった広い意味での被告人の防御及び検察官の訴追意思といった双方の安定度ということを考えると、ある程度枠組みははっきりさせていったほうがいい。そういう意味では審判対象の画定というものを1つ出すというのは、非常によいことだと思っています。
 今回問題になっているところ敷衍して言いますと、最初に申しました訴因変更に対する予防法学的なアプローチを実務が長年とっているのは、具体的に言いますと、心証と訴因がずれてきた場合は、早めに訴因変更を促したり、あるいは釈明したりして、争点化を図る。そうのようなことを通じて、訴因変更をしない、あるいは争点化しない形での事実認定を避けるように心掛けているわけですが、それは、一面訴因変更それ自体の判断の困難性を訴訟の場面で現実かさせないといった実務的な配慮があるからだと思います。今回の判例は、そういった実務的配慮の1つとしの側面を正面から取り上げて判例としてきたというところで、意義が深いのではないかと思っています。
大澤 私としては、心強いご指摘をいただいたように思います。(以下略)」

※強調、アンダーラインはESPによります。

by espans | 2007-08-24 13:28  

<< 意見募集中 現代会社法入門 >>