人気ブログランキング | 話題のタグを見る

会社は株主のもの?

おおすぎ(先生)blogより

「濫用的買収者」について--paripasu さんへのご返事
http://blog.livedoor.jp/leonhardt/archives/50266769.html

その中で、興味深い指摘だと思った点のは、以下の点です。
「「会社は、株主の利益を実現するための仕組みである」という命題は、先験的(a priori)に自明のものではなく、経験的検証を得なければなりません。それを抜きに、「 」を当然のものとして主張することは、単なる盲信です。

現在の日本の商法・会社法は、「 」を前提にしているので、解釈論はそれを前提とすべきであるとの反論が予想されますが、そこは正に解釈の分かれるところではないでしょうか。

私自身は、日本の会社法は「 」を一応の原則とはしているが、それは例外を許さないガチガチのものではなく、「 」が具体的事例にどのように適用されるのか、「 」に例外は存在するのではないか、等の点については何一つ明らかになっていないというのが現状だと見ています。

Henry Hansmann and Reinier Kraakman, “The End of History for Corporate Law,” 89 Geo. L.J. 439 (2001) は、「 」が今後、世界全体で主流となるだろうという予言を、いくつかの傍証とともに示しています。(日本語による紹介として、仮屋広郷「会社法の歴史の終わり? 」一橋法学2巻3号1223~1236頁 [2003.11] を参照。また、関連して、REINIER KRAAKMAN ET AL, THE ANATOMY OF CORPORATE LAW: A COMPARATIVE AND FUNCTIONAL APPROACH (2004) も参照)。

私は、株式会社形態(有限会社も含む)が世界の企業・法人で圧倒的なシェアを占めていることは、株式会社という仕組みに優位性がある、すなわち「株主(メンバー)の利益を実現するための仕組み」が大筋では経済効率的であることの証左だと思います(神田秀樹『会社法入門』(岩波新書、2006年)3頁、208頁を参照)。そして、株主にある程度のコントロール権を与えることがポリシーとして優れていると思います。

ただ、株主と経営者のパワーバランスをどのように設定するのがベストであるかは、誰にも分かりません。大原則からすべての事例の結論を出すというマクロなアプローチではなく、事案の個性を見ながら、大原則を歪めない範囲で諸利益の調和を図るというミクロなアプローチがベターです。

(なお、この表現は誤解を招くかもしれませんが、法律家の仕事は、基本的にはミクロなアプローチを積み重ねていくことであり、このことは実務家であっても理論家であっても変わりがないというのが私の持論です)」

以下は、会社法の専門家では「ない」ESPの私見です(有益な情報のみを、当blogに求める方は、以下は読む必要がありません)。

「会社は誰のものか?」という議論は、ここ最近、流行の議論だと思います。私自身は、「まあ、会社は株主のものでしょう」と考えてきました。ただ、これは堀江前社長のライブドアや、村上ファンドを擁護するためではなく、会社法の規定からすれば、そうならざるを得ないというのが私の考えでした。

しかし、最近は「会社は誰のものか?」という議論そのものに意味があるのか、という点を考えるようになりました。

なぜなら、会社はだれのものか、というルールをたてたとしても、会社における具体的な法的紛争は、会社法などの条文解釈によって解決されるべきものだからです。

さらに、その条文解釈においても、「会社は株主のものであるから、○○という結論が示される゛きである」という抽象的理由付けは失当となるでしょう。理由付けは、条文の文言、「具体的な」立法趣旨に従うことが必要となります(立法担当官からすれば、条文の文言がすべてとなるでしょう)。

例えば、会社法立法担当官であった葉玉氏のblog「会社法であそぼ。」で、会社法立法担当官の示した見解に対して、「会社は株主のものだから、その見解は誤りではないでしょうか?」という質問などしたら、「そういう質問自体が失当です」と返されることでしょう。

また、「会社は株主のものである」としても、それは原則に過ぎず、絶対的な命題ではありません。例外が必ず認められるものです(法律を勉強している者は、この「例外」の方にむしろ関心がいってしまうぐらいです)。

それゆえ、「会社は誰のものか?」という議論は、あまり有益な議論とは思えません。極論すれば、「会社は誰のものか?」という議論は棚上げすべきであって、また、「会社は誰のものか?」という命題から、具体的紛争の結論を出すべきではないと考えます。

そして、具体的な法律およびその条文の文言の解釈を考える方が、より有益な議論であって、具体的な問題解決に資すると私は考えます。

by espans | 2007-08-03 18:55  

<< ぶとう糖チョコレート 「基本権の保護と契約規制の法理」 >>