捜索中に届いた物品に対する捜索令状の効力

 令状に基づき、場所を捜索している最中に、宅配便が届きました。この場合、当該令状に基づき、その宅配便の物品について捜索することが可能でしょうか。これに答えたのが、最高裁平成19年2月8日決定です。

最決H19・2・8判時1980・161LEX/DB28135105
「なお,所論にかんがみ職権で判断する。原判決の認定によれば,警察官が,被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき,捜索場所を被告人方居室等,差し押さえるべき物を覚せい剤等とする捜索差押許可状に基づき,被告人立会いの下に上記居室を捜索中,宅配便の配達員によって被告人あてに配達され,被告人が受領した荷物について,警察官において,これを開封したところ,中から覚せい剤が発見されたため,被告人を覚せい剤所持罪で現行犯逮捕し,逮捕の現場で上記覚せい剤を差し押さえたというのである。所論は,上記許可状の効力は令状呈示後に搬入された物品には及ばない旨主張するが,警察官は,このような荷物についても上記許可状に基づき捜索できるものと解するのが相当であるから,この点に関する原判断は結論において正当である」

 決定文には、理由付けがなされていないのですが、これを紹介した判例雑誌の匿名コメント欄(おそらく、最高裁調査官によるもの)には、本決定を支える理由付けとして、次の3点が指摘されています。条文、制度趣旨に忠実な理由付けをしており、参考になります(以下は、判例タイムズ1250号85頁以下を参考。判例時報1980号161頁以下にも同じものが載っていますが、私がみたのは判例タイムズの方でした)。答案の理由付けにも使えるでしょう。

1.刑訴法219条1項が捜索差押許可状に捜索すべき場所を記載するとしている趣旨は、憲法35条1項の住居の不可侵を保障することにあるが、捜索実施中に他の場所から捜索すべき場所に持ち込まれ、被告人が所持・管理するに至った物について捜索を行ったとしても、新たな住居権・管理権の侵害を生じるものではなく、新たな令状を必要とする理由はないと考えられる点。
2.捜索差押許可状の効力に関し、令状呈示の時点において捜索場所にある物に、その効力が限定されるといった規定は存在しないし、そのように解する根拠も見いだせない。すなわち、裁判官は、令状発付の段階においては、当該令状の有効期間内に捜索場所に差し押さえるべき物が存在する蓋然性があるか否かを審査するのであって、物がいつ捜索場所に持ち込まれるかという点を問題としていない。実際問題として、捜査機関は、令状の有効期間であればいつ捜索に着手しても良いから、捜索開始場時期がたまたま前後したというだけで、捜索場所にある物を捜索できたりできなかったりするのは不合理である。
3.令状の呈示の趣旨から考えると、令状の呈示は、令状の執行を受ける者に対して、裁判の内容を知らせる機会を与え、手続の明確性と公正を担保するとともに、裁判に対する不服の機会を与えることにある。したがって、令状の呈示という行為自体に、呈示の時点に捜索場所に存在するものに許可状の効力を限定するという機能は存在しない。このことは、処分を受ける者が不在のときは、令状を示さず執行に着手することができるとされていることからも明らかと思われる。

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by espans | 2007-12-25 06:03  

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