執行停止に関する判例

最高裁までいくのは珍しいですね。

事件番号 平成19(行フ)5
事件名 執行停止決定に対する許可抗告事件
裁判年月日 平成19年12月18日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集巻・号・頁

原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成19(行タ)55
原審裁判年月日 平成19年07月19日

判示事項
裁判要旨 弁護士に対する業務停止3月の懲戒処分による社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害が行政事件訴訟法25条2項にいう「重大な損害」に当たるとされた事例
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071220101200.pdf

「抗告代理人上妻英一郎,同葭原敬の抗告理由(ただし,排除された部分を除く。)について
相手方は,その所属する弁護士会から業務停止3月の懲戒処分を受けたが,当該業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件の訴訟案件を受任していたなど本件事実関係の下においては,行政事件訴訟法25条3項所定の事由を考慮し勘案して,上記懲戒処分によって相手方に生ずる社会的信用の低下,業務上の信頼関係の毀損等の損害が同条2項に規定する「重大な損害」に当たるものと認めた原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない」

法廷意見は、理由付けは特にされていませんが、改正行政事件訴訟法下での重要な決定ですね。
理由付けは、田原裁判官の補足意見が非常に参考になります。

「裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見に賛同するものであるが,事案にかんがみ,下記のとおり補足意見を述べる。
本件の基本事件は,相手方の所属弁護士会が相手方に対してした業務停止3月の懲戒処分に対して,相手方が申し立てた審査請求を棄却する裁決に対する取消請求訴訟であるところ,本件執行停止決定がされない場合には,同訴訟が通常の進行速度で審理されるときには,上記業務停止期間内に審理を終結することは著しく困難であり,同訴訟係属中に上記業務停止期間が経過し,相手方は上記懲戒処分の効力のすべてを受けることになる。
このように懲戒処分の効力のすべてを受けてしまった後に,なお,訴えの利益が認められて(最高裁判所昭和56年(行ツ)第171号同58年4月5日第三小法廷判決・裁判集民事138号493頁参照),裁決取消しの判決がされても,相手方は,その取消判決それ自体により業務停止を免れるという利益を得ることはできず,別途損害賠償訴訟を提起して,その損害の回復を図らざるを得なくなる。ところで,弁護士業務は,その性質上,高い信用の保持と業務の継続性が求められるところ,多数の訴訟案件,交渉案件を受任している弁護士が数か月間にわたる業務停止処分を受けた場合,その間,法廷活動,交渉活動,弁護活動はもちろんのこと,顧問先に係る業務を始めとして一切の法律相談活動はできず,業務停止処分により,従前の依頼者は他の弁護士に法律業務を依頼せざるを得なくなるが,進行中の事件の引継ぎは容易ではない。また,懲戒を受けた弁護士の信用は大きく失墜する。そして,業務停止期間が終了しても,いったん他の弁護士に依頼した元の依頼者が再度依頼するとは限らず,また,失墜した信用の回復は容易ではない。業務停止処分を受けた弁護士が受ける上記の状況によって生ずる有形無形の損害は,後にその処分が取り消された場合に,金銭賠償によっては容易に回復し得ないものである。
原決定によれば,相手方は業務停止期間中に期日が指定されているものだけで31件の訴訟案件を受任しているというのであるから,その点だけからしても,業務停止処分により,重大な影響を受けるものと認められ,それに加えて,弁護士としての業務活動のすべての停止をしなければならないことを考慮すると,本件業務停止処分は,相手方にとって,行政事件訴訟法25条2項に定める「処分の執行により生ずる重大な損害」に当たることは明らかであり,また,本件業務停止処分の性質上それを避けるための緊急の必要があるものといえる。
 抗告人は,本件懲戒処分の効力の停止を認めた原決定に対して,平成16年法律第84号による改正前の行政事件訴訟法25条2項に関する高等裁判所の裁判例を引用して原決定を非難するが,同項の執行停止の要件は,上記改正前は,「回復困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」とされていたのを,同法の改正検討作業の過程における,同要件の緩和を強く求める日本弁護士連合会(抗告人)の意見等を踏まえて,同改正により「重大な損害」と規定されるに至ったのであって,抗告人の主張は,同条の改正経緯等からして到底採り得ないものである

下線部はESPによる。

改正の効果が現れたといったと言ってよいでしょう。
[PR]

by espans | 2007-12-20 18:25  

<< 日本評論社から重要なお知らせ またまたホットな話題 >>