賃料に対する物上代位の注意点

民法371条
「抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」

以上の条文から、次の事例はどうなるでしょうか。

[ケース]AはBに1億円を融資した。その担保のため、BはAのために所有の雑居ビル甲に抵当権を設定・登記した。甲には賃借人Cがいる。
ところが、Bは弁済期までに被担保債権を弁済できず、Aは抵当権を実行することにした。被担保債権の債務不履行前に、BからCに発生した賃料債権αについて、Cは未払い分があった。この未払い分について、Aは賃料債権αに物上代位することはできるか。

371条は、「その後に生じた抵当不動産の果実」となっており、被担保債権の債務不履行前に発生した果実(賃料債権)については、例え未履行(要は賃借人が債務不履行をしている)であっても、物上代位できない、との解釈になるとも考えられます。

しかし、このような解釈は一般的ではありません。

例えば、近江幸治『民法講義Ⅲ 担保物権〔第2版補訂版〕』(成文堂・2007年)140頁は、

「債務不履行後に生じた果実とは、債務不履行後に生じる果実はもちろん、その時点ですでに弁済期が到来していた未払賃料債権も、その対象となる」

と説明しています。

その理由付けとしては、次の説明が参考になります。

松岡久和「物上代位」鎌田薫ほか『民事法Ⅲ』(日本評論社・2005年)65頁以下。
「なお、新371条は、被担保債務の不履行後は、抵当権の効力が以後に生じた果実に及ぶと定式化し、法定果実も含めて抵当権の効力を明確化する意図であったと思われるが、この定式では、従来の解釈論(2003年改正前の解釈論-ESP補足)で債務不履行時以前にすでに発生している賃料債権に対しても物上代位ができると解されていたことと一見矛盾することになり問題である。改正の趣旨が従来の物上代位の取扱いを変えないというものであったとすれば、新371条は不動産収益執行の実体法上の基礎を明確化したにとどまり、法定果実に対する物上代位については、従来通り372条になると解することになろう」
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by espans | 2007-11-30 15:14  

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